オリジナル小説と、オリジナルロボットのラフ画を掲載して行く、私、鎧皇機神が運営するブログです。
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登場MSK紹介。
2006年11月16日(木) 18:07



機体名・パワードザクSAリッパー。

本作主人公、ビット・マースリー機。
中近距離戦に特化したMSK。
ヒートソードやシールドクローを始めとした近接格闘武器を装備し、脚部にはホバー機能も持つ。




機体名・ブロークンザク

ランデル・ルフスマン機。
格闘戦にのみ主眼を置いたMSK.
武装はザクハンマーとショルダースパイクのみ。
だが、他の二機に比べて間接周りの強度や駆動系が強化されている為、非常に高いパワーを誇る。




機体名・クラッシャーザク

ルージ・アステラ機。
後方支援、及び砲戦に特化したMSK.
高出力ビーバズーカやオーバーハングキャノンを持ち、三連装ビームキャノンと各種ミサイルポッド等を装備。
しかし、消費エネルギーが他の機体に比べて異常に高い為、追加エネルギーパックを幾つも保持している。それ故に、機体重量も極めて高く、他の二機に比べると大幅に俊敏性に欠ける。




機体名・ガンダム・ディザイア

ジェルス・アルティネス機
プロトタイプである三機のザクから得られたデータを元に開発された最新鋭MSK。
高出力ビームライフルにシールド。加えてビームサーベルを持ち、マイクロミサイル等も装備している。
しかも、それ等を可能な限り軽量化し、MA形態への変形後に音速での飛行が可能となるだけの大出力ジェットブースターを有する
第一話「敵はガンダム」
2006年11月16日(木) 18:09
蒼穹を刺し立ち並ぶ高層ビル群。
大通りを行き交うビジネスマンと一般車両。
一年前までは戦場だったこの場所にも、今は発展を遂げた近代都市が作り上げられていた。
しかし、そこから一歩退い所で周囲を見渡せば、戦争の深い傷跡が今も尚、色濃く残されている。
荒廃した褐色の乾き切った土。風に巻き上げられる砂煙。
ここは、旧アメリカ地区に落下した小さなアクシズの破片によって、その余波を受けた数少ない街。
転がるMSの残骸。風化した廃墟。命の息吹を感じさせないそんな場所にも、今は人々の気配があった。

「オラオラッ!ガンダムなんて、ザクの敵じゃないんだよっ!!」

「すげぇーっ!すげぇよ、ビット!ホントのニュータイプみたいだっ」

ネオ・ジオン軍のモビルスーツの残骸から見付かったソフトと、そのコックピットブロックを改造して造られたシミュレーターをゲームのように使って遊ぶ子供達。
薄汚れた身形からすれば、その子供達は皆、ここのスラム街で生活する戦災孤児なのだとわかる。

「これこれ…、興奮し過ぎて何て事を言うんじゃ、お前達」

シミュレーターで遊ぶ子供達の前に現れた一人の老人。

「だってさぁ…、このガンダムってヤツのせいで、父ちゃんや母ちゃんは死んじまったんだろ?だったらさ、憎いよ」

「何も、全てがガンダムのせいだとは言わんさ。…そう。時代が悪かったんじゃよ…」

老人がそう言うと、子供は口を尖らせて彼を見上げる。

「じいちゃんは、いっつも同じ事ばっかだ。そうやって、何でもかんでも「ジダイ、ジダイ」って。やっぱりオレは、連邦が嫌いだよ」

少年がそう言うと、老人は決まって困った顔をする。
少年は、それがとても嫌だった。
そして、それから11年が経った今も尚、頭上の蒼穹を見上げ、青年は同じ言葉を口にしていた…。

「そう…。オレは、連邦が嫌いだ…」

【U.C.0104/05/01】

ボリビア/ラバス基地

南米ボリビア。…嘗ては平均気温の高かったこの辺りだが、今では涼しいとさえ感じられる程穏やかな気候を保っている。
これは、コロニー落しなどによる地軸のズレや、自転速度への影響から来る異常気象が原因と思われる。
そんなラバスに基地を置く連邦軍は、ここで治安維持を目的とした新たな世代のMS。モビルスケイル(MSK)の開発に力を注いでいた。

「おーい、そこ!ちんたらやってるんじゃない!」

「す、すみませんっ」

物資の搬入を急かす現場監督と、その支持に慌てて従う三人組の作業員。
以前は、広大な敷地面積を持つこの基地では、数百人単位での仕事もそう少なくは無かった。しかし、今ここに居る作業員の数は、僅か数十名程度。自治権を放棄したジオン共和国の声明によって連邦は脅威を失い、今やこういった軍備は縮小の一途を辿っていた…。

「ジオンが無くなったって、敵がいなくなったワケじゃねぇんだぞっ!ちゃっちゃと働けっ!」

「はいっ」

強い日差しを遮る帽子のツバをつまみ、被り直した現場監督がポツリと呟く。

「…あんな連中、ここに居たっけか…?」

小首を傾げ、それでも何処かへと去って行く男を作業の傍らに見送る三人組。

「あ、危なかったな…」

「ビットが手を抜くからだろっ」

「ルージッ、騒ぐなって…。また怪しまれるだろ?」

「ご、ゴメン。ランデル…」

中肉中背の慌てた様子の少年。褐色の髪の彼が、ビット・マースリー。三人組のリーダー的存在だ。
加えて、背の低い気弱そうなメガネの少年が、ルージ・アステラ。
そして、クールな印象の端麗な長髪の少年が、ランデル・ルフスマン。
彼等三人は、ある目的の為にこの基地へと忍び込んだ、所謂「泥棒」であった。
その目的とは、この基地で現在開発中の新型MSK「RXT−04/ガンダム・ディザイア」の奪取である。
だが連邦には、ガンダムの名が付くMSを以前開発途中で強奪された経験があった。そこで、この基地の責任者は、非常に高い警戒態勢の下で研究開発を行っていた。
その為、彼等三人は、幾つもの苦難を乗り越える必要があったのだ。

「…そこで、オレ様の天才的頭脳が役に立つってワケだ」

「もったいぶらずに早く話せ」

「そうだよ。時間が無いんだからさ…」

「そう急かすなって…。急がば回れって、爺ちゃんも言ってたろ?」

等と口走りながら、楽しそうに懐から地図のような物を取り出すビット。

「コイツは、事前に仕入れておいたここの間取り図さ。…で、ココ見ろよ」

運んでいた小さなコンテナの上に間取り図を乗せ、その一部を指差してルージとランデルに示すビット。
そこには、周囲とは隔離された、小さな倉庫が描かれていた。

「弾薬庫か…。確かに、このご時世なら弾薬庫などそうそう人目に付く事も無いだろうが…」

「ま、まさか、ここに隠れろって言うんじゃ…?」

二人が恐る恐る顔を上げると、ビットはにんまりと笑顔を浮べて人差し指を立てた。

「ぴんぽーんっ♪」

嬉しそうにそう言ったビットに、ルージとランデルは怒りを露わにした。

「何が「ぴんぽ〜ん」だよっ!」

「こんな所に隠れて、誰かに見付かりでもしたら、それこそタダではすまないぞっ?」

反対する二人に、ビットは少し真面目な顔付きで答える。

「こんな場所…だからさ」

「え?」・「なに?」

「考えても見ろよ。軍事機密を盗み出そうとしてるオレ達だ。どの道、捕まれば極刑は免れないだろう?」

「…そうだな」

「にも関らず、オレ達は拳銃さえ装備しちゃいない。もし銃で脅されたりしたら、それこそ一貫の終わりってヤツだ」

「う、うん…」

「そこで、オレは考えた。弾薬庫に隠れて夜を待てば、例え途中で見付かっても直ぐに連中が撃っては来れない」

「なるほど…。そういう事か…」

「それに、ここから通じてるダクトを通っていけば、直接Gのある格納庫まで入り込めるんだ。潜伏場所に、これ以上のトコは無いと思うぜ?」

そう言って、ビットはまた、にんまりと笑顔を見せた。

「スゴイや…。流石ビットだ」

「全く…。悪知恵の良く働くヤツだな」

「にっひひひひっ♪」

三人は、作業員達に紛れて物資の搬入を手伝いながら、隙を見て弾薬庫へと忍び込んだ。
そして、時間が経つに連れて、日も落ち、深夜の3時を回った頃だった。

「そろそろかな…?」

真っ暗で月の明りさえ届かない弾薬庫の中。ひそひそ声で、ルージは尋ねた。

「そろそろ巡回が来る。その前に、行動開始と行きますか♪」

小さなペンライトに顔を合わせ、三人は首を縦に振った。
少年達の、嘗て無い作戦が開始された。
先ず、壁の上部に取り付けられたダクトの格子を外し、弾薬の詰まった金属製の箱を台にしてそこに攀じ登る三人。
そして、ペンライトで周囲と間取り図を確認しながら、ビットを先頭にエアダクトの中を突き進んで行く。
音を発てず、慎重に慎重を重ねて、彼等は遂に、目的の場所へと辿り着くのだった…。

「す、すげぇ…」

ガンダムが保管されている隔離格納庫。その中に、月明かりを受けて立つ強大な機影。

「ほ、本物の…モビルスーツだ…」

「いや…正確には、モビルスケイルという。俺もこの目で見たのは始めてだが、MSを限界まで軽量化し、その運動性能と機動性を極限にまで昇華させた連邦軍の最新鋭機…」

始めて目の当たりにする本物の兵器を前に、ルージとランデルは呆然とソレを凝視していた。

「コイツが…、ガンダム…」

両親の命を奪い、自分達のような戦災孤児を生み出した反抗の象徴。トリコロールカラーに彩られたそのMSKをビットは複雑な表情で見上げていた。

「…連邦軍の最重要機密よ…。良く知ってるのね…」

「っ!?」

突然、格納庫の何処かから響いて聞こえた若い女の声。
驚いた三人は、慌てながらも身構え、咄嗟に周囲を見渡し、その声の主を探した。

「…そんなに警戒しなくても平気。ここには、私しかいなから…」

そう言って、月明かりが差し込む天窓の下へと姿を現したのは、彼等三人とそう変わらない年頃の少女だった。
淡い紫色のサラサラとしたストレートの髪を靡かせ、今の今までベッドの中で眠っていたのかのようなパジャマ姿の彼女は、ゆっくりと歩を進め、ビット達へと近付いて来た。

「と、止まれよっ」

「…?」

急ぎポケットの中に手を突っ込み、そのままの体勢で彼女を威嚇するビット。

「止まらなきゃ…撃つ」

しかし、その脅しを物ともせず、少女はクスッと笑った。

「…持ってもいない拳銃なんて、恐くないですよ?泥棒さん…」

「うっ」

相手は同い年くらいの女の子。しかも、パジャマ姿で、どう見ても丸腰の相手だ。上手くすれば、騙せるかも知れないと、一抹の期待を胸に可能性に賭けてはみたが、彼女には容易く見抜かれてしまっていた。
こんな場所にいるからには、彼女も軍の関係者。どんなに虚勢を張った所で、訓練を受けた相手には歯が立たないと、三人は半ば覚悟を決めてしまっていた。

「…大丈夫…。捕まえるつもりなら、とっくに警備を呼んでるよ…」

「…へ?」

そう言った少女の可愛らしい微笑みに、ビットは呆気に取られた。

「ど、どういう…意味だよ?」

ポケットから手を抜き出し、そう聞き返す少年に、彼女は答えた。

「この事は、黙っておいてあげる…。だから、代わりにお願いを聞いて欲しいの…」

三人は、その言葉に顔を顰めた。
だが、その話しも聞かず、逃げ出そうとすれば、最悪の事態も招き兼ねない。
ビット達には、他に選択の余地など無かった。

「…三人は、泥棒なのよね…?」

「そ、そう…だけど…。それが、なんだよ?」

「だったら…」

少女は、驚くビットへと駆け寄り、その手を取って懇願するように言った。

「私も…一緒に盗んで」

「は、はいっ!?」

互いの呼吸を感じ取れる程の距離にまで接近した、少女の端麗な顔立ち。それは、一瞬ドキッとするほど綺麗で、ビットは頬を赤らめながら目を奪われてしまった。

「ちょ、ちょっと待ってよっ、それじゃ…僕等に誘拐までしろって事!?」

「新型MSKの窃盗罪に加え、誘拐までしよう物なら、もし捕まれば、銃殺刑も免れんぞ」

「…………………」

ルージとランデルに遠回しだが迷惑だと言い放たれ、少女は肩を落として俯いてしまった。

「な、なぁ、どっちにしろ、極刑は覚悟してたんだ。コイツ一人連れてくくらい、何て事ねぇじゃん」

「何言ってるのさ、ビットッ!」

「そうだ。…そもそも、俺達を確実に捕らえる為のワナかも知れんのだぞ?…コイツは連邦の人間だ。それを信用するというのか?」

猛抗議する二人に、ビットは何か説得する方法はないかと考えていた。
何故、彼女の味方をしているのか、その理由も曖昧なままに。

「そ、そうだ!コイツが居ればさ、もし追手に追い付かれた時でも、人質として利用価値だってあるじゃないかっ!」

「それはっ…まぁ、確かに…」

簡単に説得されてしまうルージ。だが、ランデルはそんなに容易くは無かった。

「…お前…、惚れたな?」

「ち、ちげぇよっ!何言ってんだ、お前っ」

赤面して腕をバタバタと振り回し、図星だと自己申告するビットに、ランデルは呆れ果てたと言わんばかりの溜め息を吐いて続けた。

「フゥ〜…まぁいい。ただし、責任はお前がとれよ?」

「わぁってるって…。お前等に迷惑はかけねぇよ…」

三人の許可が下りた事がそんなに嬉しかったのか、少女はニッコリと微笑んでビットの手を強く握り締めた。

「ありがとう…ビット」

「お、おう…。気にすんなって…」

しかし、そうは言った物の、彼女の出現で随分と時間を費やしてしまっていた。
急ぎ作業を始めなければ、巡回の兵士に見付かってしまう可能性が出てきたのだ。

「マズイな…。巡回がそろそろ来ちまうぞ」

「いらん事に時間をかけ過ぎだ。…どうする?」

「は、早くしないと、僕達ホントに捕まっちゃうよ〜」

早く目的の物を奪取しなければと慌て出す三人。すると、ビットの傍らに立つ少女がポツリと呟いた。

「…大丈夫。コッチに来て…」

「…?」

そう言うと、彼女はスタスタと勝手に歩き出した。
そんな少女を前に、三人は顔を見合わせて、どうした物かと思案する。
だが、結局の所、彼女の言葉を信じ付いて行くしかないと、その背を追って歩き出すのだった。

「な、なぁ、オレ達の目的は、あのガンダムなんだけど…」

「ゴメン…。アレは無理なの…」

「え…どうしてっ!?」

ビットに目的を話され、無理だと話した少女にルージが理由を尋ねる。
すると、少女はゆっくりとその意味を語り始めた。

「…あのG…ディザイアを動かすには、イグニションキーが必要なの。それは、コックピットの操縦桿と一体になった装置で、今は開発主任の部屋に厳重に保管されてる…。それを取りに行っている時間はないし、例え私がいても、捕らえられてしまう可能性が高いから…」

「マ、マジかよ…」

「でも、大丈夫…。みんなはお金になる物ならいいのよね…?」

「それは…、確かにそうだが…」

そんな会話を交わしながら、少女に連れられるまま、薄明かりの狭い通路を一列にコソコソと歩く一団。
そして、目的の場所に辿り着いたのか、少女の足はピタっと止まった。

「…これじゃ、ダメかな…?」

そう言って、彼女が指を指したのは、先程のガンダムが保管されていた場所より一回り大きな格納庫だった。
そこには、並んで三つの機体が安置されていた。

「こ、これって…ザクなのかっ!?」

それは、嘗てのジオン軍が開発運用していたザクと呼ばれるシリーズのMSにそっくりな姿の機体だった。
流石に、それにはビット達も驚いた様子で、口を半分開けたまま、ただ呆然としていた。

「…RXTシリーズ…」

「RXT…というと、コレもガンダムと同じMSKなのか?」

「左の大爪を持った機体から順に、RXT−01パワードザクASリッパー。RXT−02ブロークンザク。RXT−03クラッシャーザク。この三機は、ディザイアの開発以前に進められていたMSKのプロトタイプよ…。嘗てのジオン軍が運用していた旧ザクをベースに造られたから外観はそれに酷似してるけど、中身はMSKシリーズのガンダム用に開発されたパーツで構成されてる。価値としては…ディザイアよりも高いはずだけど…」

それぞれが気に入ったザクの前に立ち、その姿を見上げる三人。

「…近中距離戦仕様か。気に入ったぜ、パワードザクASリッパー…」

その名を持つ機体の前に立ったビットは、重厚な装甲と近接武器を多種装備した、バックパックにガトリング砲を有する左手に盾付きの大爪を持ったザクを見つめていた。

「フッ、ガンダムハンマーに対抗意識でも燃やしたのか?このブロークンザクというのは…」

強化装甲板に身を包み、巨大な鉄槌を背に装備した格闘戦を前提に造られたようなザクを、不敵な微笑で見上げるランデル。

「スゴイ!スゴイや!後方支援型の砲戦仕様か…。ボクにぴったりだよ、クラッシャーザクッ♪」

背に装備された大型ビームキャノンとミサイルボックス。そして、両脚に装着されたミサイルポッドと右手に肩からエネルギーパイプの繋がった大出力ビームバズーカを装備した、砲戦仕様のザクを見てはしゃぎ回るルージ。

「気に入ったっ!」

「フフッ、良かった…」

三人同時にそう答えた彼等に、少女はクスッと微笑んだ。

「で…どうすればいい?」

「…MSKを盗むつもりだったくらいだもの、起動手順と操縦は大丈夫なのよね…?」

少女の質問に、三人は揃って首を縦に振った。

「…じゃぁ、みんなは先に機体に乗り込んで。私がハッチを操作しておくから…」

「わかった。なら、そっちは任せたぜ」

四人はそれぞれに自分の持ち場へと移動開始した。
ビットはリッパーへ。
ランデルはブロークンへ。
ルージはクラッシャーへ。
そして少女は、MSK用ハッチの操作を行う為にコントロールルームへ。
リフトを使い、MSKへと乗り込んだ三人が、ほぼ同時にザクを起動させると、そのモノアイが薄闇の中で煌々と赤い光りを放つ。
同じ頃、コントロールルームでハッチの操作を行う少女は、一心不乱に操作盤のキーを弾いていた。

「…ハッチ開放指示を各所の格納庫へリンク。続けて、警戒アラームの解除と操作記録抹消…。これで脱出の時間は稼げる筈…」

そして、エンターキーを押し込む彼女。しかし…

ビィィィィーッ!ビィィィィーッ!

突如解除した筈の警戒アラームが作動し、その強烈な音が基地全体に響き渡る。

「…ど、どうしてっ!?」

たが、その音に驚かされたのは、少女だけではなかった。

「な、なんだっ!?」

「マ、マズイよ、ビットッ!」

「チッ、警戒アラームだとっ?…やはり、あの女っ!」

裏切られた。そう感じるのは必然かも知れない。
そう思った途端、少女はしゃがみ込み、どうしたらいいのか判らなくなってしまった。

「やだ…。やだよ…。戻りたくないよ…。助けて…。誰か、助けて…っ」

ハッチの開放指示を基地全体のシステムにリンクさせていた。だが、本来は自分がビット達と合流する為に設けたそのタイムラグが仇となってしまい、未だにハッチは開放されていなかった。

「開かないのなら、無理矢理こじ開けるまでだっ」

ランデルは、ザクが背に装備していた巨大な鉄槌をその手に握り、大きく振り被ってシャッターハッチを無理矢理に引き裂いた。

「急げ、ビット。追手が来るっ!」

「けど、あの子がまだっ」

「判らないのかっ?あの女は、最初からこうするつもりだったんだ!」

「そうだよっ!それに、あの子の事なんか、ボク達には関係ないじゃないか!」

「…クッ!」

こじ開けられたハッチから身を乗り出し、外へと飛び出す三機のザク。

「貴様、そこで何をやっているっ!」

「ッ!!」

突如、開かれたコントロールルームの自動ドア。
そこへと雪崩れ込む警備兵達。
彼等は自動小銃を少女に向け、今にも発砲しそうな勢いだった。

「い…、イヤッ、…助けて…。誰か、助けて…っ」

だが、少女が身を屈め、頭を抱え込んで蹲った次の瞬間だった。

バリンッ!!

「ぐわっ!」

コントロールルームの格納庫側を覗き見る為の窓ガラスが突然大破し、そこからMSKの手が入り込んで銃弾の雨から少女の身を包み込むように守っていた。

「…ビット…?」

『早く乗れ!急ぐんだっ!!』

窓の外に差し伸べられた、もう片方のザクの腕。
少女はザクの顔に向かって一度頷くと、その掌へと飛び乗った。

「く、くそっ、逃がすなっ!」

「警報を鳴らせ!賊が逃げるぞっ!!」

逃亡を計ろうとする少女とザクに向かい、自動小銃を乱射する兵士達。しかし、MSKの装甲にそんなちゃちな攻撃が効果を発揮する事もなく、悔しそうに目で見送る彼等。
だが、一方で別の兵士がハッチ開閉システムから基地の警報機を作動させた事で、事態は徐々に切迫して行く。

ラバス基地/総責任者・自室

「なにぃっ!?プロトタイプが三機奪取されただとっ!?」

警報で目を覚ましたラバス基地の総責任者エルジ・ノイマン技術少将は、その一報をベッド脇の壁に備え付けられた通信機から受けていた。

「あれ程、警備には念を入れろと注意したぞっ!!」

『も、申し訳ありませんっ』

「えぇい、ジェルスを呼べ!…Gを使っても構わん。直ぐに追撃させろっ!」

『はっ!』

通信機のスイッチを殴り付けて切るノイマン。
彼は頭を抱えながら、ザクを盗み出した彼等の事を憎々しいと苛立って見せた。

「チッ…、ソロモンの悪夢でもあるまいに…っ」

指の隙間から睨み付ける朝焼けの空。その遥か彼方に、少年達は決死の思いで逃避行を続けていた…。

『全く…。いくつになっても、その正確は変わらんな。ビット…』

「いいじゃんか…。ホラ、結果オーライってヤツでさ」

通信機から聞こえて来るランデルの声に、苦笑いを浮かべながら、そんな事を言うビット。
三機は揃って編隊を組み、砂煙を上げながら、荒れ果てた荒野をホバー機能で疾走する。

「スゴイなぁ、このザク。まるで、一年戦争のドムみたいだ」

『あぁ、まさか、脚部にホバー機能まであるとはな…だが、障害物には弱い。躓くなよ?ルージ』

「わ、わかってるよぉ…」

今の所、追撃の気配はなかった。それ故に安心したのか、気持ちや言葉にも、多少の余裕が出てきているようだった。
三人は、当初の予定通り北に向かって逃げていた。
国境を跨げば、その先の闇市でザクを売り払い、手に入れた多額の金で順風満帆な余生を送る為だ。
幼い頃から貧しい生活を強いられて来た彼等には、こんな手段で糧を得る事以外に考えが及ばなかった。
戦争の深い傷跡が生み出した、復興を遂げ始めている世界情勢の陰。戦災孤児の彼等には、学も無ければ働き口さえ無かったのだ…。
そんな、浅はかな夢に心を躍らせるビットに、抱かれたままの少女が呟くように尋ねた。

「…どうして、助けに来てくれたの…?」

「ん…どうしてって…」

そこまで言いかけて、ビットは言葉に悩んだ。
正直に言えば、彼女に心を惹かれていた部分が大きく、あの時の怯えた少女を見捨てて逃げ出すような事が出来なかったからだった。
しかし、そんな事を直接口に出して言えるワケもなく、ビットは少し紅潮した顔を見られないように、上向き加減で答えた。

「ほ、ホラ、オレって泥棒だし…。盗品を取り逃がして逃げるとか、有り得ねぇし…さ」

照れ隠しに鼻の先をポリポリと掻く仕草。ウソを吐いている時の、彼の悪い癖だった。

「ありがとう…」

「いいって…、別に。ってかさ、その…そろそろ教えてくんないかな?…君の…名前」

ビットにそう尋ねられ、機と気が付く。
少女はまだ、彼等に名を名乗っていなかったのだ。
そんな、まだ鼻の先を掻いているビットをクスっと笑い、彼女は自分の名を告げる。

「…エリス。エリス・アーティカよ」

「エリス…か。可愛い名前だな。その…似合ってるよ、凄く」

ずっと鼻を掻いたまま、首に抱き付いたエリスの目を見て話せないビットを、彼女は小さく笑った。

『あの…お二人さん?イイカンジのトコ悪いんだけどぉ…、後ろからさ…「な・ん・か」来てるよっ!?』

「へっ!?」

ルージの忠告に慌てた様子でレーダーを確認するも、ビットにはその「なにか」を見つけ出す事が出来なかった。

「貸して、ビット」

「え…、あっ、あぁ…」

唐突にそう言った彼女は、ビットの首に回していた腕を解いて、彼の膝の上で正面を向いて座り直すと、操作盤のキーを弾いてレーダーの有効範囲を広げて見せた。
しかし、そんな事よりも、膝に当る柔らかな感触と、サラサラとした髪から仄かに香る心地の良い匂いに、ビットは少しボ〜っとしてしまっていた。

「…見つけた。…うそっ、そんな…っ」

だが、そんな気持ちなど吹き飛ばすように、エリスは青褪めた顔で怯え始めた。
それに気付いたビットは、彼女の肩の上からヒョイと顔を出し、エリスの手元にあるレーダーを覗き込む。

「お、おい、エリス!何を見つけたって!?」

「…ディザイア…。どうしてっ」

後方数キロ先に浮かぶ飛行物体の映像。その倍率を上げて映し出されたモニターに、エリスを含めた四人は度肝を抜かれた。

「ガンダムだとっ!?」

「えぇっ!?」

ルージの機体は後方支援を目的に作られている為、そのレーダーの効果範囲は極めて高かった。そのせいで、誰よりも真っ先に気付く事が出来たのだが、一分も経たない内に、広域化していないランデルの機体のレーダーでも確認出来るほど、それは彼等に近付いて来ていた。
迫り来る飛行物体。それは、既に肉眼でも確認出来るほどの距離に近付き、変形を遂げたガンダムである事を再確認させられる。

「…見付けたぞ、エリスッ!!」

囁くような小さな声だと言うのに、その言葉には強い力が込められていた。
鋭い目付きに、被ったヘルメットの隙間から覗く銀色の長い前髪。ビット達とそう変わらない年頃のようにも見えるが、その少年は明らかに彼等よりも増せた雰囲気を漂わせていた。

「…ジェルス・アルティネス…ッ」

エリスは、その追撃して来るガンダムに向かって、そう呟いた。
おそらくは、アレを駆るパイロットの名前なのだろう。
ビット達とガンダムの距離は、もはや交戦領域にまで突入している。迷っている暇など無かった。

「ビット!操縦を代わって!」

「え…ちょっとっ!?」

操縦桿を握るビットの腕を振り払い、エリスがそれを握る。

「アイツはニュータイプ…。普通のパイロットじゃ歯がたたないっ」

「な、なんだってッ!?」

『チッ、とんでもないヤツに目を付けられたな、ビット!』

『ち、地球育ちの、本物のニュータイプだっていうのっ!?』

エリスは先行していたルージとランデルのザクをそのまま行かせ、ビットと自分の乗ったそのザクを急速反転させた。

『…やる気か、エリス?』

「戻りたくない。でも、この人達を死なせたくもないのっ」

通信機から聞こえて来たガンダムのパイロット「ジェルス」の声に、エリスはそう答えてパワードザクASリッパーの右肩に装備されているガトリング砲の照準を向かい来るガンダムに合わせた。

キュルル…ドッドドドドドドドッ!

高速回転を始めるガトリング砲の砲身から、吐き出される炎と無数の弾丸。それは一直線に飛行形態のガンダムへと降り注ぐ。
しかし…

「見える…。遅いぞ、エリスッ!」

変形を解いて急速に飛行速度を落としたガンダムは、そのまま急上昇して空中で逆さ向きになり、脚部に固定されていたビームライフルを手に取ってリッパーに狙いを定める。

「ダメ…当れないっ!」

エリスはビームが発射されるよりも早くリッパーをジャンプさせ、空中で無秩序に体勢を移動させる。
だが、直後に放たれたビームは、リッパーが移動しようとしていた未来位置へと向かって飛んできた。

「駄目だっ!!」

「え…っ」

しかし、それが当る直前に、リッパーは軌道を変えて更に空高くへと上昇していた。

「交わされた…っ?」

ジェルスは目を丸くした。
確実に仕留めたと思い込んでいたのだ。
しかし、実際にはビームの弾道を予測され、寸での所で回避されたからだった。

「い、今の…まさか…っ」

「エリスッ、やっぱりオレがやる!しっかりつかまってろっ!」

そう言うと、ビットはシートベルトを一度外し、引き伸ばして膝の上のエリスにまでしっかりと固定する。
そして、奪い返した操縦桿をギュッと握り、ペダルを強く踏み込んだ。

「ルージッ、ランデルッ」

『わかっている!』・『うんっ!』

それは、まるで熟練したパイロット同士の連携のようだった。
先行していた筈の二機は引き返し、ルージは長距離を取ってビームバズーカを構え、ランデルはリッパーの頭上を跳び越してガンダムへと鉄槌を振り下ろしていたのだ。

「こ、こやつ等っ!?」

『さぁ、交わしてみせろっ!』

ブロークンザクのザクハンマーがガンダムの鼻先を掠める。しかし、回避行動はニュータイプにとってお手の物だった。

「ナメるなよ、ザク如きがっ」

『それは、コッチのセリフッ!』

「!?」

ブロークンザクのザクハンマーを交わし、反撃に転じようと回避位置からライフルを構えたガンダム。しかし、その直後、巨大なライトグリーンの閃光がジェルスへと襲い掛かった。

「クァッ!!」

間一髪だった。咄嗟に振り上げた左手のシールドがクラッシャーの放ったバズーカのビームを受け止めていたのだ。
しかし、強い衝撃に撃たれ、体勢を崩したガンダムは、一歩後退して空中に留まってしまう。

『まだまだぁーーーーーっ!』

「な、なんだとっ!」

それは、一瞬の出来事だった。自身のシールドで塞がれた視界に、突然現れた深緑の影。その瞬間、ガンダムのシールドは四枚下ろしにされてしまっていた。

「バカなっ、コイツ等、ただの盗人じゃないのかっ!?」

「お前等が綺麗な学校でお勉強してる時も、オレ達はMSの動かし方だけを頭に叩き込んでたんだっ!!」

鋭く光る赤いモノアイ。
シールドクローを振り払ったリッパーが墜落するガンダムを睨み付けていた。

「クッ、素人だと甘く見ていたかっ…だがっ!」

地面スレスレで体勢を立て直したジェルスのガンダムは、一転、砂塵を巻き上げてリッパーへと襲い掛かる。

「ザクがぁ…っガンダムに勝てるものかよっ!!」

ライフルを投げ捨てたガンダムは、腰から引き抜いたビームサーベルを手に、それをリッパーへと斬り上げた。
だが、背から掴み取ったヒートソードでリッパーは振り下ろしから受け止める。

バチチッ!

飛び散る火の粉。
空中で再び激突した二機のMSKはそのまま硬直状態になって互いに譲らない。

「ジオンのシャア・アズナブルは、ザクでガンダムを撃退してみせたぞっ!」

「チィッ、戯言をぉぉーーーーーっ!」

ヒートソードを力で振り払い、ガンダムはその頭上へとビームサーベルを斬り返す。

「パワーで勝っていたってぇーーーっ!!」

振り払われたヒートソード。だが、その反動を利用したリッパーは、その場でバック転し、右足を思い切りガンダムの顎に向けて蹴り上げた。

「なんとぉっ!?」

あまりの衝撃にガンダムの頭部は弾き飛ばされ、破損したパーツと共に百メートル下の地面へと叩き付けられる。

「グァッ」

コックピット内で強く後頭部を打ち付けた為か、ジェルスはそのまま意識を失ってしまう。

「ハァ…ハァ…。ザクを…ナメんなってのっ」

バーニアを点々と放ちながら、体勢をゆっくりと整えて荒野に着地するリッパー。

「凄い…。何処で実戦訓練を…?」

「実戦…??そんなもん…、受けた事…ねぇぞ…?ハァ…ハァ…」

エリスの問いに、肩で息をしながら、そう答えるビット。
それに驚かされた彼女は、心の中で呟いた。

(…いきなりの実戦で、ニュータイプのジェルスを退けたっていうの…?まるで、アムロ…ううん、シャア・アズナブルの再来を見ているみたい…)

そんな事を考えていると、突然ビットが彼女に尋ねた。

「な、なぁ…、トドメとか…やっぱ、刺さなきゃ駄目なのか…な…?」

「え…?」

敵とはいえ、つい先程まで会話していた相手を殺すという行為に、ビットは些かの戸惑いを感じていた。
当然だろう。ついさっきまでは、何の変哲も無い十六の少年だったのだから。
その事を再確認させられたエリスは、ビットの顔を見て優しく微笑んだ。

「…優しいんだね。ビットは」

「ち、ちげぇーって!ただ、余計な殺生はするなって、じっちゃんが言ってたから…」

またも赤面するビット。しかし、彼等にそれほどの時間の猶予は無かった。

『そんな事話してる場合じゃないよっ!』

『後続が近付いて来ている。早々にここを離れた方が良さそうだ』

「あ、あぁ、わかった」

通信機を通してルージとランデルの警告を受けるビット。
接近中のジェガン隊を確認した彼等は、急ぎその場を後にするのだった…。

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